「蜃気楼」
「君は目に見えるものが全てだと思うかい?」
地平線に現れる巨大な氷の大陸。
「何ですか突然。」
「物事に突然などない。
脈絡があることを理解するのは天地買収人にとって必要不可欠なこ
「はいはい。……僕は別に目に見えるものが全てだと思っていませ
「本当にそう思ってるかい?」
「はい。」
「本当に?」
「本当です。
ああ、つまらない。
「まあいい、実際世界はそれが全てではないのだからな。」
「それが言いたくてわざわざ蜃気楼を見に来たのですか。」
「逆だ、蜃気楼を見たから言うべきことが思いついた。」
蜃気楼、その中でも幻氷と呼ばれるこの現象は、
「無数の世界が存在している中で断言することは難しい。が、
「そんなこと言われなくても。」
チッチッチッ
「わかってないなあ。」
「うざ。」
「君は天地買収人として1人で世界を廻ったことがないからわから
「何をですか。」
「孤独は人を狂わせる、そうだろ?周りからの認識を失ったとき、
「鏡でも見ればいいのでは?」
「自分が映るのは元から所持していた鏡だけだ。
ようやく助手は真面目な顔をして考え始めた。
「数多ある世界を捉えているのはこの目であるのに、
「だから自分の目を信用しないのですか?」
「そういうことだ、珍しく冴えているじゃないか。」
「珍しいは余計です。」
「まあ、そこまで極端に考えなくていい。
「何を言いたいのですか、一貫した主張をしてください。」
「0か100かで捉えるな。
……私は君の存在さえ疑わなくてはならない。」
ああ、周りの温度に影響されないはずなのに寒さを感じる。
私は今どんな表情をしているのだろうか。